「手揉み製茶研修会~京都方式の板ずりを学ぼう!」 報告書
手揉み製茶の製法は、1738年に宇治湯屋谷(京都府綴喜郡宇治田原町)の永谷宗円により考案され、従来の茶に比べ色・香り・味ともに優良だったため、全国に広まり、今日の宇治茶手揉み製法に発展した。日本茶の長い歴史の中で培われた、芸術的とも言える手揉み茶の形状と、洗練された手揉み製茶の技術は、機械製茶が一般的となった今日においても茶製造法の原点として保存され、各茶産地で受け継がれている。
研修会では「京田辺市手揉み保存会」様より講師をお招きし、宇治茶手揉み製茶技術(宇治茶製法)だけに見られる 「板ずり」と呼ばれる最終仕上げの工程(板を使って揉み、茶の形状を丸く細く伸ばし、色・香りを良くする)もご紹介いただきながら、実際に手揉み製茶を体験した。
宇治茶会館にあるホイロ(4台)をお借りし、冷凍茶芽(品種「ごこう」・2.5kg詰×4袋)は京都府茶業会議所にご準備いただいた。宇治茶会館ピロティ―には防風・防寒のため吊り下げ式の幕も事前に設置いただき、ホイロに必要なガス設備も完備されていたので、理想的な研修環境をご提供いただけた。
参加者を4グループに分けて、それぞれに講師に付いていただき研修を実施した。講師の皆様の熟練の技術を目の前で観察し、説明や補助もいただきながら自分自身の手と体全体を使い再現してみるといった経験は大変新鮮で、茶葉が揉まれて形を変えお茶に変化していく様子は、探求心を刺激され興味深く、美しく芸術的でもあった。また、手揉み製茶の繊細で複雑な技術を機械の動きとして翻訳し、今日の機械製茶を築き上げた先人に思いを馳せることもできた。製茶工場において葉打機→粗揉機→揉捻機→中揉機→精揉機といった製茶工程で見られる機械の動きが、見事に手を使い再現されているようにも感じたが、本来は逆で、手揉み製茶の技術を機械が再現しているという事実に改めて気づくことができた。また、茶の品質や外観を大きく左右し得る手揉み製茶技術の繊細さを知り、熟練の技の向こう側に拡がる奥深い世界も大いに垣間見ることができたのは、講師の皆様の懇切丁寧なご指導のおかげであった。6~7時間にわたる長丁場の手揉み製茶研修であったが、気力・体力の折れそうな時には講師の皆様に励まされ、たくさんお茶の話も聞かせていただき、参加者どうし交流も深めることができた。
仕上がった手揉み茶は、講師の方に講評をいただいた後、参加者にお持ち帰りいただいた。時間の制約もあり、研修会場でそれぞれのホイロごとに飲み比べてみることは出来なかったが、テキストもお渡しし、参加者各自が自宅で手揉み製茶について確認・復習する機会を作ることはできた。
手揉み製茶研修会を通じて、講師の皆様に教わりながら、一般参加・日本茶インストラクターの枠を超えて同じ茶に向き合い体得できた経験や知識は、今後の様々な場面で活かされることと思います。
研修会開催にあたり、お力添えいただきました皆様、大変ありがとうございました。